関西の夏と言えば鱧!
「梅雨の雨を食って旨くなる」と言われるように、鱧は梅雨明けごろから急激に美味しくなります。
また「海の水がひっくり返ると漁が増える」とも言われ、大雨の後は入荷量も増加。
6・7・8月はこの魚を仕入れない日はないです!
「毎日必要なもの」それだけにより目利きは慎重にしっかり厳選が必要なのです。
ハモは産地による味わいがかなりはっきりしています!
こちらの市場に入荷するのは主に愛媛・徳島・淡路のもの。
まれに、特にシーズン前半は九州のものが入荷することもありますが、ほとんどが関西。
2021年入荷分に関し、この3つの産地を比べてみると
見た目
愛媛>淡路=徳島
特にこの年の愛媛産は肥え方と色目が素晴らしかった!
5月ごろから丸々肥えて、見た目は非常に美味しそうなものが入荷。
淡路産は絶対数が多いので、良いものが多い反面、悪いものも多く見えます。
その点、徳島産はほとんどが釣り物なのできれいなものばかり。
味わい
淡路≧徳島>愛媛
見た目の良さが、そのまま味の良さにつながらないのが面白い所!
どの産地の物も毎年試食するのですが、愛媛はその印象が良くなかった・・・
まず愛媛産。
市場中見回して一番よく肥えた美味しそうなもの。
身質良くプリップリ!期待値は高かったですが食べた印象は「旨味も甘味も薄い」
その翌日徳島、そのまた翌日淡路と食べ比べました。
徳島「昨日よりかなり甘みある」
淡路「今まででダントツ旨味・甘味がある!」
ということで、この年は淡路産の厳選品を中心に、その入荷が無い時は徳島産で買い付けています。
毎年本格シーズン前に食べ比べますが、ほとんどこの順位は変わりません。淡路の鱧はエビ・カニを食べていることが多いので、それが甘味・旨味に影響してるのかも!
韓国産は味も値段も別格!
パッと見た瞬間、それと分かるほど美味しそうなのが韓国産の鱧。
尻尾の先までよく肥えた美しい魚体、柔らかさを感じる黄金色の皮目。
小さなものでもk3000~!
500gくらいの鱧になるとk4000~4500くらいになります。
滅多に入荷が無いのと、この値段なので普段使いにはしにくい魚。
ほとんどの日は淡路産の鱧を厳選して買います。
良い鱧を選ぶうえで私が気を付けてみてるポイントは
- パッとした見た目の印象(皮の色艶、柔らかさ・肥え方・雰囲気)
- 腹の膨れ具合・餌を食べていないか
- 肛門より下の肥え方
- 身にしまりがないか
- 尻びれに黄金のすじがあるか?
もったいつけて色々書きましたが、ほぼ直感です。
まず大切なのは第一印象。
美味しそうに見えるか、そうでないかが一番大切かもしれません。
次に腹をさっとさわります。
子が入っているだけならいいのですが、餌を食べたままになっているものには注意。
そのまま放置しておくと「えばんで」(餌がお腹の中で腐って臭いが出ること)しまって、身にまで臭いが移ります。
市場にある物は活け〆してすぐの物が多いので、すぐに腹を開ければ問題ないです。
しかし朝納品して、仕込みは昼からという店舗では致命傷となることも。
パッと見て肥えた鱧でも、子や食べたエサでお腹周りがふっくらして、肛門あたりから尻尾にかけて急激に痩せて細いものも多いです。
本当に美味しい鱧は尻尾の方までふっくら肥えて見えます。
最後に全身をなぞるように、しまっている箇所がないかチェック。
活け〆が上手くできていないと「カチン」と固くしまった個所が出てきます。
先に尻尾から「しまり」が始まることが多く、その後全身にそのしまりが回る可能性が高い。
鱧の定番料理と言えば「鱧ちり」ですが、しまりのある鱧は骨切するとどうしてもそこから旨味が逃げていてしまいます。さらにしまった鱧は湯に落としてもキレイに開きません。
尻びれの周りに黄金のすじがある鱧は旨い!という噂
尻びれ沿いに見える黄金色のライン。
全ての鱧にあるわけではなく、一部の鱧にしか見られない現象。
このラインのある鱧は脂があって特別美味しいんやで!
昔々、知り合いの魚屋さんに教えてもらった目利きのコツです。
が!果たして本当にそんなことがあるのでしょうか?
ということで同じ日に入荷していた同じ淡路産の鱧で「見た目80点のラインあり」と「見た目100点満点のライン無し」を食べ比べ。
結果見た目100点満点の鱧の方が甘味あって美味しかったです。なので肥え方や色艶の良さを優先して仕入れる方が確実と思います。同じような見た目で迷った時はラインありを優先する程度にしています。
関西の夏と言えば祇園さんと天神山
関西では有名なこのお祭りに欠かせないのが「鱧料理」
別名「鱧祭り」と呼ばれることもあるくらい鱧が消費されます。
なので毎年、祇園さんのちょっと前くらいから鱧の価格が高騰。そのまま天神さんが終わって8月に入るころまでずっと高値が続きます。
活けの鱧の相場は大体k1500~2000といったところですが、この時期はk2500~4000くらいまで上がることも。
コロナの影響のあった2020・2021に限っては、逆に鱧があふれk1000~1800と非常に安かった・・・
鱧の下処理・仕込みについて
鱧の骨切のポイント
鱧の骨切の「やり方」についてはyoutobeなどにもたくさん動画も上がっているので、そちらを参考に。
ここでは「より良くするためのコツ」をご紹介します。
ポイントは2つ。
- 骨切する包丁の角度をやや左、尾の方へ傾けて骨切する。
- 大きな包丁で、刃全体を使ってゆったり骨切する。
1.に関しての理由
鱧をまな板に置いた時、小骨は斜めに向かって入っています。
これに対し、まな板に90度にまっすぐ包丁を入れると切り口が尖り、やや長く残ってしまいます。
やや左に傾けることで、切り口が鈍角になり、骨の長さも最短になります。
2.に関しての理由
「骨を切ること」だけに集中してしまうと、肝心の身が潰れてしまい、そこから旨味が抜けやすくなってしまいます。
目指すイメージとしては、ゆったりと包丁全体を使い、身をつぶさないように包丁を入れ、皮目ギリギリ残すその過程で、自然と骨が切れている感じ。
これだけやってもまだ骨がジャリジャリ残る・・・
そういう方はヒレを抜いた後、きれいに穴が見えずに小さな骨が残っていませんか?
この骨は骨切しても残るので、骨切前に取っておかないといけません。
鱧の内臓の掃除
鱧の子は様々な料理に珍重されますが、それ以外の内臓も湯引きや煮物で大変喜ばれます。
内臓の処理は少し面倒ですがコツが分かれば意外と短時間でできるようになります。
順番としてはこんな感じ
- 浮袋を外す
- 各部位に分ける
- 各部位を掃除する
- しっかり水洗いする
- 酒に浸して置く
1.浮袋を外す+掃除の仕方
はじめに浮袋を取っておくと他の部位をバラしやすくなります。
浮袋は薄い膜につつまれています。
そっから引っ張り出せばつるつるっと浮袋だけを取り出せます
浮袋を開くと
薄い膜と血管と臓器っぽいのがついてます。
これは包丁で簡単にこそぎ落とせます。
この浮袋を開くのがちょっとした手間。よく切れる包丁でもきれいに開きにくい!なので別のやり方もご紹介します。
浮き袋をよく見てみると
ひものような物がにょろにょろ。
で、ひもをゆっくり引っ張ると
中の薄い膜と血管と臓器がキレイに取り出せます。
完了!
2.各部位に分ける+掃除する
浮袋を外した後の内臓はこんな感じ。
各部位のつながっている部分が見やすくなるので、それぞれ切り離します。
この時点では「苦玉」は肝に付けてバラしておけばいいでしょう。
鱧の子(この日はかなり小さい)は腎臓と対になって膜でつながっているので、この膜を包丁で切りながら外していきます。
胃と腸は切り離し、それぞれ開いて内容物をこそいで掃除します。
上が腸で下が胃。
腸は柔らかいので、力を入れるとちぎれてしまうので注意。
最後に肝から「苦玉」を割らないように外したら完了。
水を替えながら何度か水洗いをした後、日本酒に浸けて置いたら下処理の完了。
はもの実際の入荷状況
2023-9 世にも奇妙な鱧を仕入れ?!・・・見た目は全く普通の鱧
変な鱧入ってたんで見てもらってもいいですか?
・・・確かに今日ははもの入荷量は少なかったけど、ちゃんと1本1本確認して納品したはずやのに・・・なんかありました??
めっちゃ黄色い!
骨切したら余計黄色が目立つ・・・何ですかこれは?
いや~長年仲買やってるけどこんなん初めて見たわ!荷受けにも聞いたけど誰も見たことないって。原因とかもなんもわからんわ~ごめんな~
魚の身色が美味しそうに見えるとき「飴色の身」なんて表現しますが・・・
それを余裕で通り越して『ホンマに黄色い身』
外見は普通の鱧でしっかり活かってました。臭みとかも全くなかったんです。が!なんか脂回ったものを食べてるみたいな食感。風味も乏しく全然美味しくなかったです。
12-26季節外れなんて言わせない!最高の鱧発見!
ここ最近見かけないような丸々太った体。
皮目の色艶がよく、ハリがあってなめらかで柔らかそう。
全盛期でもなかなかこんな美味しそうなものはないです!
しかしながらこの寒い季節に「はも」を食べるイメージなんてないですよね~
見立て通り、ねっとりした身質にたっぷりの旨味という極上物。
少しおすすめはしにくいかもしれませんが、食べてもらえれば絶対納得してもらえる自信あり!
季節外れなんて言わせません!他の鱧と違い寒さにも負けずしっかりエサを食べた美味しい鱧。「寒はも」などと名付けておすすめしてみては?!
はもの料理・レシピ
鱧と冬瓜の冷やし鉢
薄く葛を引いた鱧と冬瓜の夏のベストな組み合わせ。鱧の骨からとった出汁でまとめています。暑いにもピッタリの冷たいお料理。
はもの子の玉子豆腐
こだわりの蘭王玉子を使った玉子豆腐。はもの子のしっかりした旨味と食感を卵が優しく包み込みます。暑い日にさっぱりとして心地よい一品です。