開業する方はメニュー作りは物件選びや資金調達の前に行いましょう。
メニューを営業を開始する直前に作成するのでは遅すぎます。
例外として、その日市場で仕入れた魚を使った季節メニュー等で寸前までメニューの詳細が分からない場合が挙げられますが、その場合でも「仮にこれが入荷する」と仮定して考えておくべきです。
メニューは資金調達や物件選びといった準備などと合わせて、可能な限り早い時期に作っておきましょう。
メニューによって厨房設備や機材にも違いがあるので、必要な費用や選ぶ物件にも関わってくるからです。
メニューがあってこそ売り上げ計画や利益の予測を立てられます。早めにメニューを作成しておかないと、しっかりとした事業計画すら作れません。
これだけは押さえよう!メニュー考案5つのポイント!
ただ料理を並べるだけがメニューではありません。
飲食店にとってメニューは、いかに利益を得るかという経営の面でも、いかにお客様に支持されるかという満足度の面でも非常に重要なのは言うまでもありません。
お客様に感動を与えながら、自然と効率よく利益を出せる。
それが理想のメニューなのです。
ここでは最低限おさえておくべき5つのポイントをご紹介していきます。
ポイント①【再確認】自分の強みを活かしたメニュー作りをしよう
飲食店開業の際、最も重要で、最初に取り組まなければいけないのが「コンセプト作り」
当然メニュー作りもコンセプトの内容に従って作っていきます。
そもそもそのコンセプトこそ、自分の「強み」を元に考えられたものではないでしょうか?
だからコンセプトに合うようにメニューを作っていれば、自然と強みを活かすメニューが出来上がるはず。
ですがコンセプトには、料理以外にも様々な要素が含まれています。
あれやこれやと思考を巡らすうちに、メニューがあらぬ方向に進んでしまうこともあるかもしれません。
そんな時こそしっかりと自分の強みを再確認する必要があるのです。
「強み」にも色んな形があります。
料理経験が長い方は料理そのものが強みとなるでしょう。
他にも漁港に知り合いがいて魚を安く直接送ってもらえるなど、仕入れ面に関しての強みがある方もいるでしょう。
「自分の接客」が強みだという方なら、接客を活かせるようメニューは簡素化が必要かもしれません。
これから繁盛店を作っていくためには、ご来店いただいたお客様にリピーターになってもらうのが一番。
そのために必要なのは、お客様に「感動」していたくこと。
「感動」といっても何か難しいことをするわけではありません。
たった一つのことにチャレンジするだけ。
それは「お客様の期待をほんの少しでも超えた商品をご提供すること」
ここでいう商品には料理や素材だけではなく、接客や気遣いといったサービスも含まれています。
これを可能にするのが自分の「強み」を活かす創意工夫。自分の持つ強みを最大限に生かすことができれば、お客様の期待を容易に超えることができるでしょう!
「商売とは、感動を与えることである」
とは、かの松下幸之助氏の言葉。
そして感動を与えるのは自分の強みを活かすこと。
それを常に頭に入れながらメニュー作りにも取り組んでいきましょう。
ポイント②そのメニューはコンセプトに沿って作られていますか?
何度も言いますが、飲食店にとってコンセプトは非常に重要です。
メニューも基本的にこのコンセプトに沿って考えていかなければいけません。
しかし
「あれも提供したい、これも提供したい。」
「他の店ではこんなランチが好評だから取り入れたい。」
試行錯誤するうちにコンセプトから外れたメニューになっていませんか?
例えば
- ママ友同士のランチの集まりをターゲットにしているのに大盛メニューがメイン
- 魚料理をメインにしていたはずなのに、いつの間にか肉料理が目立つ
せっかくしっかり考えたコンセプトなのに、メニューがちぐはぐでは「いったい何のお店なのか?」わからくなってしまいます。
そうなると、事業計画もビジネスモデルも無意味になってしまい「本当に利益の出るお店にできるか?」まで全く分からなくなってしまいます。
計画的に商売を繁盛させるためにも、しっかりとコンセプトに沿ったメニュー作りが重要です。
ポイント③まずは大まかなメニューの「骨格」であるメニュー構成を考える
ここでの目的は、かたよりのないバランスの取れたメニュー構成をすることが目的です。
そのために考えるのが①全体のメニューアイテム数と、②カテゴリーごとのメニューアイテム数のふたつ。
①全体のメニューアイテム数
メニューアイテム数が多く選択肢が豊富であるほど、顧客の満足度が上がって商売繁盛!
とは限りません。
多くの場合、逆にメニューアイテム数は絞り込む方がいい結果を生みだします。
メニューを絞り込むことでこんなメリットが考えられます。
B:仕込みの手間が少なくなり、人件費を節約・自由な時間が増える
C:廃棄ロス量が減り、原価率が下がる。
D:狙った料理を食べてもらいやすくなる(後述)
中小規模の飲食店であれば、30~50品が一般的だと言われています。
②カテゴリーごとのメニューアイテム数
こちらはメニュー構成にかたよりが出ないようにするため必要な作業です。
カテゴリーとは
イタリアンなら▶前菜・パスタ・ピザ・デザートetcという感じになります。
和食・割烹であれば▶「コース料理一本」ということも考えられます。
カテゴリーは業態によって違うので、開業したいお店に合せ考えましょう。
カテゴリーが決まれば、考案したメニューをカテゴリーごとに振り分けます。
全体の数からカテゴリーごとにメニューアイテム数をチェックすることで、かたよりが分かります
ポイント④「何」でお客様を呼び、「何」で儲けるのか?を明確にしておく
「商売」という点ではこの項目が一番重要です。
「お客様を呼びこむ」「儲ける」
それぞれメニューの役割を明確にすることで、お客様に感動を与えながら、自然と効率よく利益を出せる。
そんな理想のメニューを作りましょう。
①お客様を呼び込むメニューとは?
提供すれば、お客様に間違いなく喜んでもらえ、またそれを目当てに来店する方が多いメニュー。
平たく言えば動物園の「客寄せパンダ」的な考え。
料理や素材だけではなく、価格も重要な要素となってきますので、必然的に原価率は高くなるでしょう。
②儲かるメニューとは?
①とは逆に原価率の低い料理ということになります。
しかし、単純に原価のかかっていない商品を並べるという意味ではありません。
何の工夫もない商品は、価値を感じられず注文されることはありません。
また、無理におすすめして注文してもらっても商品にガッカリされたら本末転倒、元も子もありません。
儲かるメニューほど、魅力のある商品であり、自然と注文される必要があるのです。
①に比べさらに難しい、ここが店主の腕の見せ所ともいえるでしょう。
例として海鮮居酒屋であれば
お客様の目の前で焼く七輪焼き。
朝市場で仕入れたばかりの活きた珍しい貝を5種セットで980円。
貝好きの方には安くて美味しいとても魅力を感じて貰えるメニュー。
原価は450円。
②儲かるメニュー
同じく朝市場で仕入れた新鮮ネタを使った天ぷら盛980円
見た目も豪華でボリュームも充分。
ですが市場でネタを安く仕入れ、野菜と組み合わせることで原価200円。
①を目的にご来店されたお客様も、ほとんどが自然に②もご注文していただける。
そのために②の商品自体のレベルを高めたり、【当店名物】のように目立つようにおすすめしておくといいでしょう。
また、メニューアイテム数が多すぎると②ではなく、他のメニューばかり注文されてしまうということも考えられます。
メニューアイテム数を絞り込み、カテゴリーでしっかりバランスを取ることはここでも役に立つのです。
①自体の原価率は46%。かなり高い数字ですがしっかりとお客様を集めてくれるという役割を果たしています。
①②合わせると原価率は33%。しっかりと利益の出るメニューになっていると言えます。
こちらの居酒屋は「市場にコネがあり仕入れに強い」という強みがありました。
だからこそできたこのメニュー。
ここでも自分の強みを活かすことが重要なのです。
上記に加え、調理技術や盛り付けによって「満足度が高く、かつ原価率を抑えた」メニュー。つまり①であり②でもあるメニューが開発ができれば、より収益を残しやすいお店になります。
ポイント⑤一番の悩みどころ!?メニュー価格の設定
「料理の値段は原価の約3倍」と言われています。
これですと料理に対する原価率が約33.3%で、ほぼ適正価格となります。
が!!!!!実際はそんな単純に決めていいものではありません。
メニューの価格帯を決めるうえでまず知っておかないといけないのが、この3つ。
②周辺エリアのライバル店の相場
③想定客単価との整合性
ひとつひとつ内容を確認していきましょう。
①その業態の相場
例えばコーヒー1杯の値段
- マクドナルド 100円
- ホテルのコーヒー 800円
同じようなメニューでも、立地・雰囲気・サービスなど、業態の違いによって価格に差があります。
ちょっとした時間潰しか、ゆっくりする時間を過ごすためかなど、開業する店舗がどの利用シーンで
どの価格帯に近いか、調べておく必要があります。
②周辺エリアのライバル店の相場
出店候補エリアでライバル店の質と価格をチェックしましょう。
場合によってはビジネスモデルや事業計画を練り直す必要が出るかもしれません。
お客様は他の店との比較でお店の入店を決め、満足度にも影響を与えます。
周辺店舗の価格帯・質・量・入店状況をチェックし、そのエリアに受け入れられる価格を設定しましょう。
③想定客単価との整合性
コンセプト作成時に客単価の設定も行っていると思います。
単品の価格だけではなく、トータルの客単価を考慮して価格設定をし、コンセプトとかけ離れないようにしましょう。
例えば海鮮居酒屋で客単価3500円とすると
刺身500円
飲み物400×3杯=1200円
小鉢もの 300円×2=600円
メイン500円×2=1000円
と想定され、その価格帯のメニューが必要になります。
メニューの原価率は30%が基本!?
「原価率30%」はよく言われる数字です。
しかしこれは料理単体ではなく、全体の「平均原価率30%」を指しています。
原価率の高い商品もあれば、低い商品もある。
具体的にいうと、
②利益を生み出す原価率の低いメニュー
この両方を用意しておくのがセオリーです。
この2つの商品を組み合わせ、適切な原価率を目指すことが商売繁盛の秘訣でもあります。
また業態やコンセプトによっては人件費をかけずに、料理原価をかけることで利益を出していくやり方もあります。
そんな時は「平均原価率」は35%が目安となる場合もあるでしょう。
全体の「平均原価率30%」はあくまで目安となる数値。数値ばかり追っていてはお客様に感動してもらえるメニュー作りはできません。「感動」を追い続けた結果が「数値」として現れるくらいが理想ですね。
最後に
メニューの構成・内容・価格が決まれば、このページの目的であるメニュー考案は完成です。
最低ここまでは事業計画や資金調達の前に進めておきたいものです。
しかし実際の営業にこのメニューを使用するには、メニューブックなどを作成しメニューを「表現」する必要があります。
「表現」の仕方も飲食店の利益や満足度にも関わってくる重要事項です。
メニュー表現についてはこちらのページをご覧ください。