味・おすすめ度:★★☆☆☆2.5~★★★★★5.0
本来非常に美味しい魚だが、産卵前から極端に評価を落とす。
またその時期が一番多く出回るので、安くてまずい魚というイメージが強い。
悪印象から冬の極上ものでも安く買えることが多い。
価格・産地・呼び方など
かつて大阪湾東部は「茅渟(ちぬ)の海」と呼ばれていたので、そこで多く獲れる魚の意で関西ではもっぱら「チヌ」(諸説あります)
春先の大量の時期はkg300円程度から買える事も。
冬の極上物でも㎏1000円を超えることは珍しい。
まず初めに声を大にしてお伝えしたいこと
チヌはめちゃくちゃ美味しい魚なんです!
こちらの市場ではクロダイと呼ぶ方は少なく、ほとんどの方が「チヌ」と呼ぶのでそれに合わせています。
いやいや・・・それは無いで・・あんな身ぃゆるくて臭い魚絶対使えへんで!
僕も・・・安いだけの魚っていうイメージしかないです。
皆さん!それは使う時期が悪かっただけなんです!
チヌが市場に大量に出回るのは春頃。
もしかしたらその時期のチヌを使ったのでは?
確かにその時のチヌは全然アカンのも多いし、僕もまず買いません。
チヌを買うなら絶対冬!寒チヌは物が全く違いますから!
見てくださいこの肥え方!
ちなみにこれは1月泉佐野から直送のもの。
お腹ふくれてるように見えますが、まだまだ子は小さく、ただただ太いだけ。
昔は僕も「チヌはまずい魚」って思ってました。
それがある出来事がきっかけで価値観が180度変わったんです。
店でいそいそと仕込みに励んでいたら、突然師匠が店にやってきて
「これ今釣ってきたから!使っとけ~」
と生簀にドバドバと勝手に魚を放り込み疾風のように消えていきました。
「なにくれたんやろ?!」と楽しみに生簀をのぞくとチヌ・チヌ・チヌ・・・
ぜ~んぶチヌ。
「何やねん・・チヌかよ!あいつ~いらん魚全部ほって行きよったな!」
僕はこの時の自分の無知さを本当に恥じています。
「タダでくれたからまぁいっか」
昼ごはんにでもしようと、1尾さばき始めたその時です。
包丁を入れた瞬間ただ物ではないことが分かる。
ねっとりした身と、乳白色のたっぷりの脂が包丁にまとわりつく。
魚の秘めたる「力(リキ)」が包丁をズンズン伝ってくる。
「なななな・・・なんじゃこりゃぁぁぁぁ~」
その瞬間は驚きしかない。今まで触ったことのあるチヌとはまるで別物。
食べると驚きは感動に変わる。
口の中にまとわりつくような緻密で粘りある食感。
これだけ活かってるのに旨味がどっしり、脂が甘くまったり。
「冬のチヌってこんなに旨かったんや」
師匠・・・疑っててゴメンナサイ
まずい魚と思っていただけに、その美味しさのインパクトは強烈。
それ以降、僕は冬になると市場で最高のチヌを求めるようになる
冬場は沖の方にいて、それを狙った漁なんてないので全然入荷してこないんですけどね。ちなみに師匠が釣っていたのは和歌山の御坊です。
こちらは2024年の初市で入荷してきた香川産奇跡のチヌ。
例年この日はめちゃくちゃ天然魚が少ないのに!です。
ねっとりした身質で旨味たっぷり。
特にこのチヌは、甘味が強く極上の味わいでした!
冬のチヌは美味いんです!・・・と思ってたら
翌日こんなチヌが入荷してきました・・・
一匹はよく肥えてますが、もう一匹(上画像の上・下画像の左)はガッリガリ。
もちろん身はペラッペラ!腹は薄すぎて使えませんでした。でも不思議と身質は最高!めっちゃ甘味があって味も良かったですよ。
冬だからって何でも買っていいわけではないんですよ~
春先のクロダイにご用心!この系統の魚が人気なく安い理由
ポイントは特に「クロダイ」がこの時期産卵期を迎えるということ。
水温が上がりだす春頃は「乗っ込み」とも呼ばれ、クロダイがどんどん浅場に入ってきて毎日大漁。
市場にはクロダイがあふれ、値段も安い。
秋ごろのさらに半額くらい!
一見よく肥えて見えますが、お腹がめっちゃポッコリしてる。
この産卵期のクロダイは子に栄養を取られ身が柔く弱い。活け〆してあっても水っぽく、味わいもあまりよくありません。その上なんでも食べる「悪食」のため臭いのある個体もしばしば。
つまり・・・一番入荷の多い時期が一番美味しくない時期なんです!
そのため「クロダイは安くてもあまり美味しくない魚」というイメージを持つ人が多い。
少し値の上がる秋ごろはだれも見向きもしないという状況。
だから物が良い最高のクロダイでも、そこまで値が上がらないと予測できます。
市場ではキビレもヘダイも、クロダイとひっくるめて売られている感じなので「クロダイ系」の魚は総じて安いんです。
ただこの時期お腹にパンパンに入ってる真子や白子は非常に美味。
それだけを目的に買ってもお釣りが出るくらい安いので、考え方によっては買い。
乗っ込みの時期、浅瀬に来るクロダイはちょっとドス黒さを感じるくらい黒い、まさに「黒ダイ」。
これは日焼けによってメラニン色素が定着しているとも、食べてるエサの影響だとも言われています。
乗っ込み以外の時期でも真っ黒なクロダイは、浅瀬に居ついた「瀬付き」かも。臭みがある可能性が高いので、買うのには注意が必要。
一年中沖の深場に棲み、まれにエサを獲るため浅場を回遊するクロダイは本来の銀黒色。
越冬のため深場に落ちたクロダイも、乗っ込みから秋まで浅場で暮らしたものは黒みが残ります。
が今までの経験上、「真っ黒」というイメージではありません。
なのでクロダイは産地や時期だけでなく、皮目の色合いも含めて目利きするといいと思います。
僕は乗っ込みの時期は買わないのと、それ以外でも真っ黒なやつだけは避けてます。
クロダイの実際の入荷状況
2024-1 今日も泉佐野のクロダイ!・・・ちょっと肥え過ぎちゃう?!
1.5~2㎏くらいのチヌですが、もうめちゃくちゃ肥えてるんです!
お腹もパンパンに見えるので「まさかもう子が大きくなってる?」
と思って開いてみたら
子はまだ小さいし、内臓にも脂しっかり巻いてるし
お腹ふくれてるのは空気やったぽいし。
身を引いたら包丁真っ白になるくらい脂あるし
半分焼き霜造りにして食べたらめっちゃくちゃ旨いし
これでk650円とかありえへんでしょ!
大好評の泉佐野のクロダイでしたが・・・
2月半ばにもなると子が大きくなってきて、一気に脂が落ちています。
ホンマに一気に全然アカン・・・違う魚みたい。
まだまだ春は遠いのですが、12~1月頃が美味しさの旬と言えますね。
2024-1 泉佐野直送!活け〆クロダイは今が旬!
去年からお世話になり始めた仲買さんだけが取り扱う「泉佐野直送魚」
なのでこの産地のチヌは初めて買いますが
めちゃくちゃ肥えてる!(一番肥えてるのだけ選ったからですが)
約1.5㎏。魚体が丸いでしょ!
現地活け〆で追っかけ市場に到着なので鮮度感も抜群。
身に赤みがありますが、脂もあって旨味も抜群!臭みなんてありません。
刺身で食べると身は柔らかいですが、独特のあのなめらかさが感じられます。旨味がしっかりで、生で食べてるのに昆布締めしたみたいにアミノ酸系の旨味がスゴイ!これがk500円。安すぎ。
めっちゃ安かったので色々料理して大特価しました。
めちゃくちゃ立派なあら炊き!
身がふんわり仕上がってめちゃ旨。
バターソテー
ちょっとイタリアンに和風ジェノバソース。
大葉や松の実などを使って、魚との相性抜群に仕上げてます。